未来の日本を担う子どもの成長に携わる「保育士」は、子どもたちの命を守る責任ある仕事です。
しかし、社会の中でも非常に需要の高い職種でありながら、給与が低いのが現状でした。
近年はその給料の低さが問題視されていて、徐々に処遇を改善する動きが進んでいます。
三原じゅん子こども政策担当大臣は2024年11月22日、2024年度の保育士等の人件費を前年度から10.7%引き上げると発表しました。
保育経営「見える化」を強化❗️
— 三原じゅん子 (@miharajunco) December 7, 2024
保育士さんの処遇改善は、保育の質にもつながる重要なもので、今回の補正予算案には、過去最大の10.7%の引き上げを盛り込みました。
そして、最も大事なことは、この効果が現場の保育士さんに着実に行き届かなければならないことです。…
保育士の処遇改善と保育経営の「見える化」で、保育士の働く環境は変わるのでしょうか。
保育士の処遇改善

保育士の処遇改善とは、国が保育士の給料アップのために策定した制度です。
保育士はずっと以前から子どもの命を預かる責任のある仕事ながら「給与が安い」など、仕事のやり甲斐を搾取されてきました。
そしてだんだんと保育士のなり手が減っていき、保育士不足が大きな課題となっていきました。
そういった状況の打開策として、処遇改善加算の取り組みが始まりました。
この処遇改善は要件を満たしている施設へ、国から補助金が振り込まれ、職員等に分配されます。
給料明細には、「処遇改善手当」として補助金分が基本給とは別に明記されます。
保育士の賃金は上昇傾向にあり、今後も処遇改善加算による賃金アップが期待されます。
\給料明細公開/

処遇改善手当が支給されていました。
対象の施設
認可保育園(公立保育園、私立保育園、小規模保育事業、企業主導型保育事業など)
対象外の施設
認可外(無認可)保育園(病児保育室、院内保育室、一時保育園、児童発達支援事業所など)
処遇改善加算Ⅰとは
「処遇改善加算Ⅰ」とは、全職員の平均勤続年数によって加算率が上がる制度のことです。
「全職員」とは、非常勤含むすべての職員が対象で短時間パート職員や、調理員、事務職員などの保育士以外の職員も対象となります。
保育士として長く勤めている人が多いほど、全体の給料もアップ!!
処遇改善加算Ⅱとは
「処遇改善加算Ⅱ」は、新たな役職につくことで、月額4万円又は月額5千円の補助金が支給される制度です。
保育士はこれまで園長や主任保育士といった役職しかないため、なかなか役職に就くことが難しく、給与が上がりにくい状況でした。
そこで、キャリアアップによる昇給の機会をつくるためにこの制度が導入されました。
役職により3~7年程度の勤続年数と所定の研修を終えて役職につくことで、5,000円もしくは40,000円が補助金として加算されます。
職務分野別リーダー | ・経験年数概ね3年以上 ・ 担当する職務分野(左記①~⑥)の研修を修了 ・ 修了した研修分野に係る職務分野別リーダーとしての発令 | 月5,000円アップ |
専門リーダー | ・経験年数概ね7年以上 ・職務分野別リーダーを経験 ・4つ以上の分野の専門研修を修了 ・ 専門リーダーとしての発令 | 月最大40,000円アップ |
副主任保育士 | ・経験年数概ね7年以上 ・職務分野別リーダーを経験 ・マネジメント+3つ以上の分野の専門研修を修了 ・副主任保育士としての発令 | 月最大40,000円アップ |
研修とは都道府県が実施する「キャリアアップ研修」のことで、所定の分野を必要時間、受講する必要があります。
処遇改善加算Ⅲとは
「処遇改善加算Ⅲ」とは、期間限定(終了日未定)の保育士賃金改善のための施策です。
対象の施設で働く全職員を対象とし、毎月9,000円(収入の約3%)の賃金を上乗せする制度です。
処遇改善加算の問題点
処遇改善加算の補助金は保育園に直接振り込まれるため、保育士の給料に反映するかどうかは園の判断によります。
よって、補助金が保育士の手に渡らない場合もあります。
そこで、国からの補助金が保育士に行き渡っているかどうか、それを確認できる政策が2025年より始まります。
その政策とは、こども未来戦略のこども・子育て支援加速化プランにおける「保育所経営の見える化」です。
保育所経営の見える化
見える化とは?
経営の「見える化」とは、子ども子育て支援法に基づく施設給付を受ける全ての保育事業所に対して、経営状況や職員の給与実態など、運営に関する情報を透明にする取り組みのことです。
見える化の目的
○ 幼稚園・保育所・認定こども園等の施設・事業者の経営情報の公表やデータベース化等の継続的な見える化の仕組みの構築を進め、処遇改善や配置改善等の検証を踏まえた公定価格の改善を図ることを主たる目的とする。
こども家庭庁|保育所等における継続的な経営情報の見える化について
○ 加えて、行政機関においては、幼児教育・保育が置かれている現状・実態に対する国民の正確な理解の促進、社会情勢や経営環境の変化を踏まえた的確な支援策の検討、経営情報の分析を踏まえた幼児教育・保育政策の企画・立案等の実現を目的とする。
○ また、情報公表の充実を図ることにより、行政機関のみならず、保護者や子育て家庭、保育士等の求職者の意思決定の支援や、施設・事業者の経営分析・改善の促進、また、研究者による学術研究や政策提言の活性化等、幅広い関係者の利益への波及的な効果も期待できる。
見える化は、子育て家庭、保育士、保育士求職者等にとって有益な情報を得ることができる制度で、保育園の経営状態が外部からも確認できることで保育士が安心して職を探すことができたり、保護者にとってより良い保育園を選ぶことができるようになります。
保育士(現役) | 保育士の待遇を改善するための補助金が適正に保育士に還元されているか検証しやすくし、それにより、保育士の処遇が改善される(給料アップ) |
保育士(求職者) | 処遇改善が適正に行われているか、職員配置は適正か等を確認してからエントリーすることができる。 |
保護者 | 適切かつ円滑に教育・保育等を子どもに受けさせる機会を確保するために、施設・事業所ごとの職員の処遇や職員配置に関する情報が確認できる |
まとめ
「見える化」により、保育士の処遇改善が進んだり、経営情報の透明性が向上することにより職場環境が改善したり、保護者が安心して子どもを預けることが出来るようになることを期待したいと思います。